トレンドフォロー型の戦略では、どこで利益を確定するか、つまり“出口戦略”が勝敗を大きく分けます。特に相場が急変する局面では、従来の固定幅のトレーリングストップでは対応しきれない場面も多く、利確のタイミングが難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。本稿では、そうした課題を解決する柔軟なトレーリングストップ手法「Chandelier Exit(シャンデリア・エグジット)」について、解説していきます。
Chandelier Exitとは?
トレンドフォロー戦略を行う上で、利益を最大化しつつリスクを最小限に抑えるには、優れた出口戦略が不可欠です。一般的な固定型トレーリングストップの欠点を補い、より相場に適応した動きを可能にするのが「Chandelier Exit(シャンデリア・エグジット)」です。
”シャンデリア”という名前の通り、シャンデリアが天井からぶら下がるように、このトレーリングストップは過去一定期間の最高値(あるいは最安値)から、ぶら下がる位置に設定されます。これにより、トレンドが継続する限りは利益を追い、トレンドが反転したときには自動的にポジションをクローズする仕組みとなっています。
開発者:チャック・ルボー(Chuck LeBeau)
Chandelier Exitは、テクニカル分析の第一人者チャック・ルボー(Chuck LeBeau)氏によって開発された、ボラティリティに応じて動的に変化するトレーリングストップ指標です。ルボー氏は、E.F.ハットン社にて副社長およびリージョナル・フューチャーズ・ディレクターを20年以上務めた後、CTA(商品取引アドバイザー)やヘッジファンドマネージャーとしても豊富な経験を積みました。
彼の代表作『Computer Analysis of the Futures Market』は、7か国語に翻訳され15回以上再版されるなど、世界中の投資家に大きな影響を与えています。Chandelier Exitは、彼が“もっとも軽視されがちな分野”と考える「出口戦略」に焦点を当てて設計されたものです。
ボラティリティの指標「ATR」とは?
Chandelier Exitのコアとなるのが「ATR(Average True Range)」です。これはJ. Welles Wilder Jr. によって考案された指標で、ロウソク足の高値・安値・前日終値の関係から実際の値動き幅を計測し、相場のボラティリティを数値化します。
チャートにATRを表示させると、サブウインドウにラインとして描画され、期間内の平均的な値動きの大きさが視覚的に確認できます。たとえば、ATRが上昇している場合はボラティリティが高まっていることを示し、下降していれば相場の動きが静まっていることを示します。トレーダーはこのラインを目安に、ストップロスの幅やトレードのリスク調整をリアルタイムで行うことができます。
ATRを用いることで、Chandelier Exitは相場が大きく動くときにはストップ幅を広げ、動きが小さいときにはストップをタイトに保つといった柔軟な対応が可能になります。
固定型トレーリングストップとの違い
従来の固定型トレーリングストップは、設定したポイント数やpipsに応じてストップ位置が一定幅で上下するシンプルな仕組みです。しかし、実際の相場は常に変動しており、ボラティリティが高まればストップ幅を広げる必要があり、逆にボラティリティが低ければ狭めるのが理想です。ところが、固定型ではこうした相場の変化にリアルタイムで対応できないため、突発的な変動によりノイズに刈られてしまったり、安全なストップ幅では期待した利益が得られないといったリスクが生じます。結果として、思わぬ損失や機会損失につながるケースも少なくありません。
それに対し、Chandelier ExitはATRを利用することで、ボラティリティの急変にも自動で対応します。トレンドが強い時には広く、レンジ相場や急変動が少ない時には狭く設定されるため、より相場の実情にマッチしたストップロス管理が可能になります。
Chandelier Exitの説明動作
固定型トレーリングストップとの比較
実践での活用と導入状況
Chandelier Exitは、特にトレンドフォロー型の戦略において、利益を可能な限り伸ばしながら、反転リスクを最小限に抑えるための洗練された決済戦略です。その最大の強みは、ボラティリティに応じてストップ位置を自動的に調整できる柔軟性にあります。
固定型のトレーリングストップは、シンプルな設計である反面、相場の変動性に対応することができず、トレンドの急加速や急変動に対して不利に働く場合があります。たとえば、急な上昇局面で早期に利確されてしまったり、ノイズによってストップが過剰に作動してしまうケースも少なくありません。
一方、Chandelier ExitはATR(平均的な実質的値動き幅)を活用し、相場が大きく動く局面ではストップ幅を広げ、静かな相場ではストップをタイトに保つことで、トレンドにしっかり追従しつつ過剰な利確や損切りを避ける構造になっています。こうした性質により、異なる銘柄や時間軸に対しても高い適応性を発揮し、現代のボラティリティ変動が激しいマーケットにおいて、より実践的で戦略的な選択肢となります。
この機能は、「ワンクリックFXトレーニング」に搭載され、今後はリアルトレード版にも順次展開していく予定です。今後もさらなる機能強化や適用範囲の拡張を進めてまいりますので、引き続きご注目ください。