小泉農政大臣は、ポンコツか救世主か? 5kg2000円は農水族への宣戦布告!10年越しの雪辱

全国平均で5キロ4000円超という前代未聞の価格上昇、政府の後手に回る備蓄米政策、農水相の更迭。こうした混乱のなかで、2025年5月、小泉進次郎氏が農林水産大臣に就任しました。2016年、自民党農林部時代の因縁を思い出させる展開です。まさに農水利権へのリベンジが開始された瞬間でもあります。

本稿では、小泉農水相の政策と行動を軸に、「令和コメ騒動」の全体像とその本質、そして私たちが直面する真の課題を読み解いていきます。

小泉進次郎の農水相就任とコメ危機の背景

2025年5月21日、小泉進次郎氏は石破茂首相により農林水産大臣に任命されました。これは、江藤拓前農水相が「コメは買ったことがない」と発言したことが問題となり、更迭されたことに伴う人事です。

2025年5月時点で、全国平均のコメ価格は5キロあたり4268円に達しており、1年前の2倍であり、政府が目指す2000円台からは大きくかけ離れた水準となっています。

3月から始まった備蓄米の放出も、競争入札方式で実施され、大半をJA農協が高値で落札したため、小売価格への影響は限定的でした。今までの米騒動対策は、全くの茶番であったことが証明されたと言っても良いでしょう。

「2000円米」構想と随意契約への転換

小泉大臣は就任にあたり、「コメ担当大臣」としての強い意気込みを語り、国民が生活の中で不安を感じるコメ価格の高騰に対し、スピード感を持って対応する姿勢を明確にしました。

実際、コメ価格が全国平均で5キロあたり4000円を超える中、政府備蓄米を5キロ2000円程度での店頭販売を実現するという具体的な目標を掲げています。その一環として、従来の備蓄米入札制度を中止し、随意契約方式への移行を決定。

就任直後には、直近に予定されていた第4回備蓄米オークションを即座に中止し、農林水産省に対し、迅速な放出の準備を進めるよう指示しました。

農協改革での実績と農水族との対立

小泉農水相は2015年から自民党農林部会長として農協改革に取り組み、消費者目線での構造改革を推進した経験があります。

特に2016年には、JA全農の手数料構造や資材供給の非効率性に強く反発し、「農家が農協職員を養うために農業をしているのか」と厳しく批判しました。その改革姿勢は、農協内部や自民党内の農水族議員との軋轢を生む一方で、農業流通の透明化と効率化に向けた世論の支持を集めました。

しかし、政府の規制改革推進会議が求めた肥料・農薬販売の抜本的見直しは、最終的に年次計画の策定にとどまり、抜本改革には至りませんでした。事実上、小泉氏の意見や構想は農水族に押し返され、潰されたと言っても良い結果となりました。

選挙と連動する備蓄米放出の政治的背景

小泉大臣が備蓄米の放出を進める背景には、選挙を意識した政治的な狙いも考えられます。まずは、都議選を狙って東京に優先的に供給し、2000円を実現する可能性があります。

「全国に届かなくても、早く届けられる地域には先行して2000円台で供給する」としており、段階的な展開を前提とした対応を進めています。

具体的な地名は明言されていないものの、物流の効率性や需要の大きさから、東京近郊を中心とした展開は十分に考えれます。全国展開は衆院選を見越して、後回しになることは政治的思惑となることもあるでしょう。

段階的展開と制度設計の実現可能性

この備蓄米の放出は、農林水産省によって随意契約方式で進められ、6月初旬には5キロあたり2000円台での販売開始が見込まれています。輸送費の国負担や需要に応じた供給体制の構築も進んでおり、制度設計としての実現可能性は高いとされています。

ただし、東京での先行展開が成功しても、全国展開の段階で物流の負担や価格調整、生産者側の反発といった課題が表面化する可能性もあります。こうした動きは、単なる経済政策ではなく、選挙を見据えた戦略的判断として読み解かれており、国民の需要と合致しているかは定かではありません。

備蓄米の限界と現実離れした政策発言

政府の備蓄米は、総量でわずか100万トン程度に過ぎません。2月以降の放出により残量は91万トンとなり、さらに小泉大臣は追加で30万トンを出荷する方針を示しています。

これにより、備蓄は実質的に残り約61万トンとなる見込みです。一方、日本のコメの月間消費量は60万トンを超えており、この備蓄量では全国供給を数か月維持するには到底足りません。

それにもかかわらず、小泉大臣は備蓄米の無制限供給が可能であるかのような発言があり、現実の需給状況との乖離が懸念されています。

高値在庫と市場の混乱リスク

さらに市場には、すでに2024年産の高価格米が出回っており、これが今後、備蓄米を用いた2000円台の低価格米と直接競合することになります。

3月以降に放出された備蓄米も当初は高値で取引されていたため、業者は損失を避けるため仕入れに慎重になっていることは予想できます。

JAを含む流通業者は、すでに高値で調達した米を今後どう処理するかという課題に直面していることは容易に想像でき、市場では在庫調整の停滞と価格の不安定化が生じていることでしょう。

2025年のコメ生産見通しと逼迫する需給

加えて、政府は4月末の調査をもとに、2025年の主食用コメの生産量を719万トン(前年比約40万トン増)と発表しました。生産増加は一定の安定材料とはいえ、日本の年間消費量(約700万トン)とほぼ同水準であり、備蓄に回す余剰はほとんどないと考えられます。

このように、数値的にも日本のコメ需給は逼迫しており、政府による備蓄米政策が市場全体の価格を安定させるには、構造的な限界があると言えるでしょう。

新米供給の楽観と需給不安定化の懸念

9月に新米が出回ることでコメ不足が解消されるという楽観論もありますが、備蓄米がすでに枯渇している場合、需要を十分に満たすことは難しく、8月には過去に例を見ないほどの高値に達する可能性も否定できません。

理論的には、新米供給による需給改善が期待されていますが、2024年の例では価格はむしろ上昇しており、今年も同様の流通停滞や在庫調整の失敗が起きれば、9月以降の安定は保証されません。

また、2025年の大阪・関西万博による訪日外国人の需要増や、急増している輸入米も、市場に予測不能な影響を及ぼす可能性があります。

2024年産米の実態と前農相の誤算

2024年産のコメの生産量は679万トンと、前年比で18万トンの増加となりましたが、JAなどが集荷した量はむしろ21万トン減少しており、一部は市場に出回らず在庫として滞留している可能性も指摘されています。

当時の坂本哲志農林水産大臣は、「9月頃から本格的に出回ることで、品薄状態は順次解消される」などと楽観視し、退任会見では、「備蓄米を放出しない決断に誤りはなかった」などと、今考えれば全く間違っていたと言える状況になっています。

2025年産への不安と農水省の責任

2025年産のコメについても、生産量が期待通りに確保できない可能性は昨年同様に高く、新米が市場に出回る9月以降も価格高騰のリスクは続くと見られます。そして、備蓄米が十分に確保できない状況に陥れば、緊急輸入という選択肢も現実味を帯びてきます。

小泉農水相は農業改革の必要性を訴えていますが、農家は長い年月をかけて土を育てコメを作るために時間がかかります。農水省には、この失敗を重く受け止め、農業改革を進めてほしいものです。

トランプ関税と緊急輸入の必要性

1ヶ月以上前の投稿でお伝えしていますが、トランプ関税の手土産にコメ100万トンを緊急輸入するべきとお伝えしました。もう手遅れ感がありますが、備蓄米が底をついた後に「もうありません」と言い出しても、すでにアメリカに価格交渉で足元を見られる状況に陥っているでしょう。

3回目の関税交渉もベッセント米財務長官が欠席と報道されていますが、対応の遅れが目立つことは否めません。すぐに4回目に行く予定とのことですが、少なくとも順調ではないでしょう。

国民が気づいた“小泉リスク”

2024年の総裁選を通じて、多くの国民が「小泉進次郎という政治家の危うさ」に気づいたのではないでしょうか。政策の根幹を理解しておらず、現実の情勢を論理的に捉えているとは言い難い場面も多々見受けられます。

周囲の政治家からは「人柄は良い」と評価されつつも、そのおぼっちゃま育ちゆえに政治の権力構造や利権の複雑さに十分対応できていない懸念もあります。計画なしに備蓄米を放出すれば、夏以降の混乱は避けられないことは容易に想像できます。

利権構造への挑戦と改革派としての可能性

しかし、小泉大臣は、農水族と呼ばれる既得権構造に対して、真正面から挑む可能性を持つ存在であることも確かです。

単にその人気に便乗するような輩ではなく、真に志を共にする優秀な仲間と協力し、利権に迎合せずに信念をもって農政改革に挑むのであれば、10年前の因縁に決着をつけるだけでなく、政治家として大きく飛躍する可能性があるのかもしれません。

今こそ「誰かの神輿」に乗せられるのではなく、信頼できる仲間と共に神輿を担ぎ、国民のために本気で奮闘する姿を期待したいところです。

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