宮城県知事選(2025年10月26日投開票)は、結果としては現職の村井嘉浩氏(65)が約32万4,375票、得票率54%で6選という“いつもの光景”に見えました。ところが選挙後、村井氏が当選会見の場で見せたあの「舌出し」ジェスチャーが一気に拡散し、選挙そのものより“態度”が話題になるという、ちょっと妙な状況になっています。
みなさんも動画を見て「え、これ本当に知事がやったの?」と感じたのではないでしょうか。しかもその発言の流れには、参政党・神谷宗幣代表との“舌出し応酬”という背景がありました。では、なぜここまで炎上したのか。参政党側の戦術はどこでミスったのか。高市早苗総理の高い支持を前提にしたとき、どうすれば違う結果になったのか。少し落ち着いて整理してみましょう。
😁「舌出し」は本当に“冗談”で済む話だったのか
今回の騒動の起点は、村井氏が当選確実後の挨拶で、参政党の話に触れた瞬間に舌をペロリと出してみせた場面です。本人は10月28日の定例会見で「選挙中に神谷さんが『村井は舌を出していた』と投稿していたので、その“お返し”のつもりだった」「結果が出てホッとした瞬間で、軽率だった」と釈明しました。つまり本人の説明はあくまで“ノリ”であり、“悪意はなかった”という線です。
ただし、動画を見た多くの人が受け取った印象は「お返しの冗談」よりも「ざまあみろ、負けたな」という勝者の優越感に近かったはずです。なぜそう見えたかと言えば、①神谷氏の名前を出した直後、②表情が緩んで、③支援者の笑いも乗ったからで、文脈としては完全に“バカにしている”側に振れていました。「軽率でした」で鎮火しなかったのは、この視覚的な情報があまりに強かったからです。みなさんなら、あの場面を“仕方ないね”で流せますか?
😍神谷宗幣代表の“切り取り指摘”がブーメランに
背景をたどると、参政党の神谷代表は選挙期間中から「村井知事は演説中に舌を出していた、県民をバカにしている」とXに写真付きで投稿していました。実際には水分補給の瞬間を切り取ったものだったと村井陣営は反発し、「悪意のある切り取りだ」と不快感を示していたわけです。村井氏が会見で「だから本当にやってみせた」と言ったのは、この流れに対する“皮肉返し”です。
ただ、これは政治的に見ると最悪のやり方でした。なぜなら、知事側がわざわざ同じ土俵に降りたことで、「どっちもどっち」ではなく「公職側のほうが幼稚」という構図が完成してしまったからです。
しかも県庁には実際に苦情が入り、その後に謝罪コメント、さらに議会でも陳謝、という手間のかかる展開になりました。SNS時代の政治家は、相手の“炎上手法”に付き合わないほうが得策なのですが、今回は感情が先に出た典型例でしたね。
🤪「ざまあみろ」に見えたのはなぜか?勝利の余韻と参政党の自滅
「”ざまあみろ”にしか見えなかった」という感想は、多くの人の体感と一致しています。ポイントは3つです。
1つ目は、村井氏の勝利が“薄氷”だったこと。仙台市内では和田政宗氏(参政党が後押し)が上回る場面があり、全体の投票率も46.5%と前回より約10ポイント低下していました。
2つ目は、選挙終盤で参政党の神谷代表の演説で、高市総理の所信表明の内容にガッカリ、自民党は変わっていないなどといった演説を行ったことです。これが保守・中道の一部をしらけさせた可能性は否定できず、結果的に投票に行かなかった層を生んだと見られます。
3つ目は、参政党が“あと1.5万票”で逆転できる位置まで迫っていた点。だからこそ、村井氏にしてみれば「危なかったけど勝った」「最後は自分たちが正しかった」という気持ちが一気に噴き出したのだと思われます。
ところが、公職者がそれを顔に出してしまった瞬間に“品格の評価”が始まる。ここが選挙とSNSの怖いところです。
🤔高市人気を読み違えた終盤の“反高市”カード
今回、参政党側が一番もったいなかったのはここです。2025年10月時点での高市早苗総理の支持率は、特に20〜40代で70%を超えていました。東北でも女性や若年層からの評価は上々でした。
ところが選挙終盤、神谷氏が高市氏の所信表明に対して「がっかりした」と発言し、批判的な姿勢を示しました。結果として、“高市支持だけれど今回は和田氏に入れようか迷っていた層”が離れることは容易に想像できます。
宮城県知事選はもともと投票率が下がりやすい地方選。ほんの数%の棄権でも1万〜2万票が簡単に動く構造です。つまり、高市氏への批判でテンションが下がり、投票を控えた若者がいたとしても不思議ではありません。
その結果、参政党は自ら若年層の支持を減らし、村井氏の“固定票+郡部票”が相対的に重くなったと考えられます。高市総理と政策的に近いはずの参政党が、わざわざ同じ保守層に対して対立的な姿勢を取ったこと、この“内ゲバ化”こそが最大の戦略ミスだったと言えるでしょう。みなさんはどう見ますか?
😴本当は「宮城で高市路線を実現するのは和田」という言い方もできた
後付けではありますが、今回の情勢だと“高市便乗型”のメッセージに切り替える余地は十分ありました。たとえば「高市総理の防衛・経済安保を宮城でやるなら、村井さんより和田さんのほうが近いですよ」という言い方です。
和田氏は移民・土葬・再エネの急拡大に慎重で、半導体や安全保障関連投資には前向きです。これは高市路線と親和性が高い。にもかかわらず、参政党は途中で“反自民・反高市”のトーンを強めてしまい、せっかくの「同じ保守を広げる」チャンスを逃しました。
結果として、宮城の若い保守にこう思わせてしまった可能性があります。これが1.5万票の差を生んだのかもしれません。
😵“リコールでひっくり返す”は現実的ではない
舌出し動画が広まると同時に「リコールしかない」「辞職要求だ」という声もSNS上で出ましたが、宮城県の場合は有権者の3分の1、つまり約62万筆を60日以内に集める必要があります。今回の怒りの中心は、仙台市+参政党・和田氏の支持層で、県全体に一気に燃え広がるタイプの不祥事ではありません。
さらに、村井氏はすぐに「不快にさせたなら申し訳ない」「悪意はなかった」と釈明し、県庁HPにもお詫びを載せました。これは“逃げ切り型”の対応としては十分で、県議会も辞職までは求めにくい。つまり、政治的には“初動でマイナスを負ったが、リコールまで行くほどではない”というゾーンに着地したわけです。
😥まとめ:参政党のミスに村井は舌を出した?
今回の宮城県知事選の余韻は、選挙分析としては少し歪な形になりました。勝った村井氏は、6期目のスタートでいきなり“品格”を問われることになり、県庁にも苦情が入りました。負けた和田・参政党側は、あと1.5万票で逆転できた選挙を、自分たちの終盤の言い回しで遠ざけてしまったとも言えます。
しかも相手の“本心”を引き出すほどには追い詰めたのに、選挙そのものには勝てなかった。SNSが政治家の素顔をあっさり見せてしまう時代において、「感情で返した一瞬」がどれだけ大きく扱われるかを示した事例とも言えます。
高市総理の支持が高い局面では、その人気をどう“使う”かで勝敗が変わる。参政党は本来、高市総理と正面から対立する必要はありませんでした。神谷代表がほんの少しだけ抑えていたら、今回の構図はまったく違っていたかもしれません。皆さんは、どこが変わっていれば、違う結果になったと思いますか?



