2025年11月以降、日中関係をめぐる報道は一気にトーンを上げました。「経済への甚大な影響」、「日本企業に深刻な打撃」、「インバウンド崩壊」、刺激的な言葉が連日並び、あたかも日本経済全体がすでに深刻なダメージを受けているかのような印象が作られています。
ニュース番組やコメンテーターの解説でも、“これから起きるかもしれない話”と“すでに起きた事実”が混同され、危機が既成事実のように語られる場面が少なくありません。しかし、本当にそこまでの被害は、現時点ですでに出ているのでしょうか?
今回は、東京商工リサーチが公表した企業調査をもとに、メディア報道で強調されがちなイメージと、数字が語る現実とのズレを整理し、本当に注目すべきポイントはどこにあるのかを冷静に見ていきます。
😅「すでに減少」は、わずか1.7%
東京商工リサーチが2025年12月1日から8日にかけて実施した調査では、全国5,645社が回答しています。このうち、「すでに受注・販売が減少した」:1.7%(99社)「今後減少しそう」:13.8%(782社)「影響はなく、今後も影響はなさそう」:82.4%(4,655社)という結果でした。
ここで最も注目すべきは、「すでに減少した」と答えた企業が全体の1.7%に過ぎない点です。日中関係の緊張が報じられてから約1か月が経過した時点で、実害が確認された企業はごく一部にとどまっています。少なくとも現時点では、「日本経済全体が打撃を受けている」と言える数字ではありません。
🙄13.8%の「減りそう」は警戒感でしかない
悪影響とされる15.6%の大半を占めているのが、「今後減少しそう」と答えた13.8%です。この回答は、現時点での実績ではなく、将来への不安や警戒感を反映したものです。実際、調査時点で受注や売上が減っていない企業が8割以上を占めており、多くの企業は状況を静観しています。
特に製造業や卸売業では、中国向け取引への影響を「注視している」段階にとどまっており、サプライチェーンの混乱や輸出入停止といった事態は確認されていません。数字を見る限り、「すでに広範な被害が発生している」というよりも、「将来起こり得るリスクを意識している企業が一定数存在する」という整理が妥当でしょう。
😭影響が集中する宿泊業と、それ以外の現実
業種別に見ると、最も影響が大きいのは宿泊業です。宿泊業:「減少・減少見通し」61.9%、製造業:21.9%、運輸業:21.1%、卸売業:20.5%、一方で金融・保険業は「影響なし」が91.6%に達しています。宿泊業が突出しているのは、中国政府による渡航自粛要請の影響を直接受けるためで、これは想定内と言えるでしょう。
逆に言えば、それ以外の多くの業種では、現時点で実害はほとんど確認されていません。メディアで語られるような「経済全体への深刻な波及」が、数字としては見えてこないのが実情です。
🤔中国政府の“規制”は本当に日本経済を揺さぶるのか
現在、中国政府が日本に対して打ち出している具体的な措置を整理すると、その多くは象徴的・限定的なものにとどまっています。繰り返し発信されているのは、中国国内向けの渡航自粛要請であり、法的拘束力を伴う渡航禁止やビザ停止ではありません。航空便の減便も主に中国系航空会社による判断で、日本の航空会社や日本人利用客への影響は限定的です。
輸出入についても、日本産水産物を除けば、新たな包括的規制や制裁措置は発表されていません。自動車、機械、部品といった主要分野での取引は継続されており、サプライチェーンが混乱している兆候も現時点では確認されていない状況です。
🥱強気の演出と、裏側で進む“現実的対応”
報道では、中国側の強硬姿勢を象徴する場面として、劉勁松アジア局長がポケットに手を入れたまま歩く映像が繰り返し取り上げられました。しかし、その一方で、同局長や中国側関係者が日系企業を訪問し、事業継続を前提とした挨拶回りを行っていることも報じられています。中国経済は不動産不況や外資撤退など、内側に大きな不安要因を抱えています。
こうした状況下で、日本との経済関係を本格的に悪化させる強硬策を取ることは、中国自身にとってもリスクが大きいのが現実です。表向きの強気なメッセージとは裏腹に、経済面では現実的な対応を取らざるを得ない・・・その矛盾した動きこそが、現在の日中関係を象徴しているようにも見えます。
🤯数字を見ると見えてくる冷静な評価
今回の調査データを整理すると、実際に減少した企業は1.7%、将来懸念を含めても15.6%、8割以上の企業は影響なし、影響は主に宿泊業に集中、という構図が浮かび上がります。中国経済自体が減速する中で、日本に対して大規模な経済制裁を行う余力は限られており、現時点では象徴的な圧力にとどまっている印象です。
それにもかかわらず、メディア報道では「最悪のシナリオ」が前面に出やすく、数字との乖離が生じています。不安を語ることと、事実を評価することは別です。少なくとも今は、感情的な見出しよりも、1.7%という現実の数字に目を向ける段階ではないでしょうか。皆さんは、現在の日中関係をどのように見ていますか?




