今回のホルムズ海峡問題で、クウェートなどが不可抗力を宣言し「原油を出せない」という状態になっています。契約上は正当な対応で、戦争や封鎖のような事態では供給義務が免除されるのが国際取引のルールです。つまり、「出せませんが責任は負いません」という形ですね。
ただ、買い手側からすると話は別です。長期契約を結んでいても供給は止まり、違約金も請求できない。結果として「じゃあ他で調達してください」となるわけですが、これが簡単ではありません。
今回の問題は価格ではなく“供給そのもの”です。
代替として米国などから調達しようとしても、タンカー不足、輸送ルートのリスク、保険料の高騰といった制約があり、「買えば届く」という状況ではない。つまり、契約があっても物が来ないという、非常に厄介な状態です。
一方で、湾岸諸国側も無責任に見えてしまうのは事実ですが、現実的には動きようがないのも分かります。ホルムズ海峡はイランの影響力が強く、クウェートやイラクのような国が単独で安全航行を確保できるわけではない。やりたくてもできない、というのが実態でしょう。

それでも、買い手側の不満は残ります。「そこはあなたたちの庭先では?」という感覚です。この違和感は軽く見ない方がいいポイントです。なぜなら、今後の調達行動に直結するからです。
今回のような事態が続けば、買い手側は確実に動きを変えます。多少コストが上がっても、安定供給できるルートを優先する。リスクを織り込んだ価格であっても、“確実に届く”ことを重視する。
つまり、「安さ」より「安定性」へシフトです。
これは中東産油国にとっても無関係ではありません。これまでの「安くて大量に供給できる」という強みが、「不安定」というリスクで相殺される可能性がある。信頼を失えば、シェアを徐々に削られていく構図になりかねません。
だからこそ、本来はここで動くべきなのは売り手側です。航路の安全確保、共同防衛、あるいは国際的な枠組みの強化。「出せません」で終わらせず、次に同じことが起きない仕組みを作る必要があります。

そして買い手側も、受け身ではいられません。今回のような供給停止を前提に、調達の多角化やリスク分散を進める必要があります。そう考えると、パワーアジアのような動きは理にかなっています。アジアの供給網を維持することで、自国への影響を最小化する。これは善意ではなく、かなり現実的な判断です。
今回の一件、単なる一時的な混乱で終わるのか、それとも調達構造を変えるきっかけになるのか。少なくとも、「安いから中東」という前提は、少し揺らぎ始めているように見えます。
