🤣高市首相「働いて働いて」発言と電通・高橋まつりさん長時間労働を同列に報道するメディアの謎

「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」。高市早苗首相のこの言葉は、聞く人によって受け取り方が割れやすい表現です。献身の宣言として前向きに響く一方、日本では「過労死」という言葉が国際語になるほど、長時間労働が痛みとして記憶されてきました。

だからこそ、電通の高橋まつりさんの過労自殺の記憶と結び付けて語られやすいのだと思います。ただ、両者を同列に置くと議論が乱れます。本人が「働きたい」と言う場面と、職場で「働かされる」場面は、同じ“労働時間”という数字でも意味が違うからです。

今日は、事実関係を押さえたうえで、「働いて働いて」発言と長時間労働の大きな違いを、落ち着いて整理してみませんか。

🤪高市首相「働いて働いて」発言は“自分の意思”の宣言

一方で、高市首相の「働いて働いて」発言は、少なくとも形式上は「自分はこうする」という自己宣言です。実際、発言後に「長時間労働を美徳としたり、国民に働きすぎを奨励する意図ではない」と説明した趣旨の発信もあり、本人としては“働かせたい”のメッセージにされたくない意識が見えます。

ここで大事なのは、言葉の印象ではなく、構造の違いです。

  • 自分が「やる」と言うのは、本人の裁量が前提です。
  • 職場で「やれ」と言われるのは、指揮命令と評価が前提です。

同じ「たくさん働く」でも、裁量の有無で心理的負荷はまるで違います。政治家の覚悟の表明と、組織の中での強要は、似たフレーズで語られても同一ではありません。多くの人が感じた違和感は、このズレから来ているのではないでしょうか。

🤔高橋まつりさん事件の事実関係の疑問

高橋まつりさんは2015年3月に東京大学を卒業し、同年4月に大手広告代理店の電通へ入社しました。入社から1年に満たない2015年12月25日、会社の借り上げ社宅から転落して亡くなりました。後に労働基準監督署が、業務による心理的負荷を背景とする精神障害と自死の関連を認め、2016年9月に労災として認定しています。

報道で繰り返し言及されるのが、亡くなる直前期の時間外労働です。労災認定の根拠として「直前1か月で約105時間」とされる数字が広く知られ、遺族側の集計ではより長い時間があったとも語られます。さらに、SNSやメッセージで疲弊や希死念慮を訴える投稿が残され、周囲に助けを求めるサインが出ていた点が重く受け止められてきました。

会社側は労基法違反(違法残業)で法人として有罪(罰金50万円)となり、経営責任を含む対応と再発防止策を進めることになります。ここまでが、時系列として押さえやすい「公的に積み上がった骨格」です。

😟「過労」が原因?制度上の整理

「過労で亡くなった」と聞くと、心臓・脳の疾患で倒れるイメージを持つ人もいます。一方で、高橋さんは自死でした。ここが直感的に引っかかるのは自然です。ただ、制度の整理としては「過労(業務の負荷)→精神障害→自死」という因果関係が認められる場合、過労死等(過労自殺)として扱われます。

つまり、論点は「本人の意思」だけではなく、意思が歪むほどの心理的負荷が業務によって生じていたかどうか、というところに置かれます。ここが理解しにくい点でもありますが、現実には睡眠不足と強いストレスが続くと、認知や感情のコントロールが落ち、判断が極端になりやすいことは、現場感としても想像しやすいはずです。

もちろん、個別の事情を外部から完全に再現することはできません。ですが、労災認定とは「証拠に基づき、業務と発症・行為の関連が相当程度強い」と行政が判断した結果です。疑いが残る人がいてもおかしくはありませんが、同時に“ゼロからの推測”で語るのも危うい。ここは慎重に線引きしたいところです。

🤔残業時間が減っても、精神疾患は減らない

2019年から本格施行された「働き方改革関連法」により、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化などが進みました。制度上は、長時間労働は確実に抑制される方向へ動いています。しかし一方で、精神疾患に関する労災認定件数は減少していません。

むしろ近年は、精神障害による労災認定が高水準で推移し、過去最多を更新する年も出ています。これは、単純に「残業時間が減ればメンタル不調も減る」という構図が成り立っていないことを示しています。

仕事量そのものは減らず、短時間で高い成果を求められる密度の高い労働、評価競争の激化、リモート化による孤立、顧客対応やカスタマーハラスメントなど、心理的負荷の質が変化しているためです。時間規制だけでは、精神的な圧迫感を十分に取り除けていないのが実態でしょう。

この流れを見ると、高橋まつりさんの事件も「長時間労働の象徴」として固定化して理解するだけでは不十分で、現代にも続く構造的な問題として捉える必要があります。

🤔問題はパワハラだったのでは?

実際に残業時間だけで説明できない現象が増えています。精神疾患の労災では、パワハラや業務の急変、顧客対応の強いストレスなどが認定理由として目立つ年もあります。ここから言えるのは、問題の芯が「時間そのもの」から「時間を生む構造」へ移っている、ということです。

新人が、経験不足のまま短納期の修正を繰り返し、クライアントに詰められ、社内でも叱責され、相談しづらく、助けが入らない。こうした状態は、たとえ残業が“月60時間”であっても壊れますし、残業が“月20時間”でも壊れることがあります。

逆に言えば、忙しい時期に残業が増えても、支え合うチームで、レビューや伴走があり、ミスが個人攻撃にならず、休む導線があるなら、同じ時間でも意味が変わります。ここで語るべきは「長時間労働=即アウト」という単純な式ではなく、「強要+孤立+叱責+逃げ道なし」が揃った時の危険性です。

😭遺族の心中と本音「金銭和解」で解決できるのか?

電通と遺族は和解に至っています。外から見ると「金銭で解決したのか」と感じる人が出るのも理解できます。ただ、遺族の立場に立てば、訴訟で白黒をつけても、本人は戻りません。むしろ「同じことを繰り返させない」ことに目的を置くなら、謝罪と再発防止の約束を取り付ける和解は合理的な選択肢になり得ます。

和解が成立している以上、過労という事実以外は深堀することはできず、社会に向けて語る言葉が「過労」中心に寄せざるを得ない現実があります。本音としては、時間よりも、職場での叱責、教育の歪み、孤立、相談のしにくさ、そして“逃げる”選択肢が閉じていく感覚が怖かったのではないか?これは断定ではなく推測ですが、少なくとも多くの人が「単なる働きすぎではない」と感じる理由はそこにあります。

😱新人教育をイジメと勘違いしている人達

新人いじめを目撃したり、実際に経験した人も少なくないでしょう。資料を作れば「やり直し」とだけ告げられ、理由を尋ねても「自分で考えろ」と返される。こうしたやり取りを何度も繰り返すうちに、成果には結び付かない残業だけが積み重なっていきます。

それにもかかわらず、「俺が育てた」と成果を誇示する人物が現れることもあります。労働意欲の搾取は、とりわけ能力が高く、真面目な新人に向けられやすい傾向があります。

高橋さんのケースがこれに完全に当てはまるかどうかは分かりません。しかし、電通という大手広告代理店の環境を考えれば、同様の構造が存在していたとしても不思議ではない、そう感じる人が多いのも事実でしょう。しかし、すでに和解が成立している以上、何があったのか?新たな事実が表に出てくることはないでしょう。

😁労働意欲は悪いことではない

高市首相の「働いて働いて」発言と、電通・高橋まつりさんの過労自殺を同列に扱う報道には、やはり違和感を覚えます。そして、現代の課題は「残業時間を減らす」ことだけでは解決しません。無理な締切、差し戻しの連鎖、叱責が常態化した文化、相談できない空気、職場での孤立、そして逃げ道の欠如など、精神疾患は、残業が少ない職場であっても起こり得ます。

長時間労働そのものが、あたかも絶対悪であるかのように語られる場面も見受けられますが、働きたくて働いている時期や、仕事が楽しくて仕方がない局面を経験した人もいるでしょう。労働意欲それ自体は、決して否定されるべきものではありません。問題は、その意欲を利用し、「やりがい」や「成長」を名目に過剰な負担を押し付ける企業体質にあります。

生産性や能力主義が行き過ぎる一方で、「残業はするな」とだけ求められる現場では、働き方はむしろ難しくなっています。皆さんは、いまの職場で「良い仕事ができている」と感じられていますか。

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