あなたのNISA、もし“使う前にあの世に行くことになったら”どうなりますか? せっかく非課税でコツコツ貯めた資産も、自分で使わなければ意味がない──そんな現実に気づいていますか? この記事では、NISAがどのように扱われるのか、相続の場面ではどうなるのか、そして本当に後悔しない使い方とは何なのか、踏み込んで考えていきます。
NISAはもしものときどうなる?
NISA口座は、本人が亡くなった時点で非課税の効力が終了します。 この時点でNISA口座にある株や投資信託は、課税口座へ払い出され、相続財産として扱われます。
つまり、NISAの最大のメリットである非課税という特典は、本人の死によって消えてしまうのです。
値上がりしても
せっかく値上がりしていても、自分が使えなかったら報われないと感じるかもしれません。 逆に、積み立てたものの評価が下がっていれば、苦労して積み立てた意味が薄れてしまったと感じるかもしれません。
自分では使えず、残された家族にもそのままの形で引き継ぐことはできず、残念な状態になる可能性があるのです。
評価損で余命宣告
仮に余命宣告を受けたそのとき、長年積み立ててきたNISAの資産が大きく目減りしていたとしたら──きっと「何のために節約して、我慢して、貯めてきたのか」と自問せずにはいられないでしょう。思い描いていた老後の暮らしが遠のくだけでなく、自分の人生そのものが無意味だったように感じてしまう人もいるかもしれません。それは金額の問題ではなく、人生の価値をどこに見出すかという深い問題に直結するのです。
NISAは相続対策に向いているのか?
結論から言うと、NISAは相続対策には向いていません。 非課税の効果は生きている間だけで、相続財産となった時点でその恩恵は消滅します。
また、現金のように簡単に引き出して分けられるわけでもなく、相続手続きや評価の点でも手間がかかります。 そもそも、NISA口座の資産は相続人のNISA口座へ引き継ぐことができないため、特別な優遇もありません。
相続目的であれば
「子どもに資産を残したい」という目的であれば、生命保険や贈与といった別の制度の方が、合理的かつ効率的だと言えるでしょう。
もしNISAに相続税の非課税枠や優遇措置が設けられれば、より多くの資産が流入するのは間違いないでしょう。制度を本格的に推進するのであれば、そのような税制上の整備も必要です。
知識の差が負担を生む制度
相続は非常に複雑で、実際に経験するまでその仕組みや手続きの煩雑さを理解している人は多くありません。そのため、誰にでも分かりやすく、かつ公平で負担の少ない形で資産を引き継げる制度が整っていれば、多くの人が安心して利用できるでしょう。しかし現実には、制度が複雑であることによって、知識のない人ほど不利になり、結果的に必要以上の税負担を強いられてしまうことも起こり得ます。
NISAは「いつ始めるか」より「いつ止めるか」が重要
NISAを始めるタイミングについて考える方は多いですが、実はもっと重要なのは「いつ止めるか」です。
若い世代であれば、投資期間が長いため、相場が下がっても持ち続けていれば回復するチャンスがあります。 ところが、高齢になってから始めた場合、相場が下がったときに回復を待てず、損失を抱えたまま終わってしまうリスクがあります。
つまり、NISAは長く続けることが有利な制度であり、いつ始めてもよい反面、使いどきをしっかり見極めないと成果を享受できない可能性があるのです。
利確のタイミング
たとえ長期的に保有できるとしても、利益が出たタイミングでは一部でも現金化を検討し、収支を着実にプラスへと導く意識が重要です。なぜなら、市場の暴落がいつ起きるかを正確に予測するのは困難であり、同様に、自分自身の人生がいつ終わるのかも誰にも分からないからです。
未来の利益を夢見るあまり、使うべきタイミングを逃してしまえば、築いた資産がただの数字に終わる可能性もあります。
せっかく貯めたお金は、自分のために
NISAはあくまで、自分自身の資産形成をサポートする制度です。
死後のことや相続を前提に使うには向いていませんし、本人が使わずに終わってしまっては本末転倒です。
もちろん、家族のことを思って資産を残すのは素晴らしいことです。 しかし、その前に、自分の人生をより豊かにするために、育てた資産を自分のために活用することも大切なのではないでしょうか。
NISAはいつ始めても良い制度ですし、若い時の方が投資期間を長く取れる分、有利なのも事実です。2024年の改正により、期間の制限もなくなりましたので、長く積み立てることができることは大きなメリットです。
評価益を現金化することが利益
だからこそ、NISAは始めるタイミングよりも、「いつ終わらせるか」「どう使い切るか」を意識することが何より重要です。
評価益が出ていると気分が良くなりますが、相場は常に変動しており、その利益が一瞬にして評価損へと変わる可能性があります。災害、テロ、紛争、円安など、予測不能なリスクは数多く存在します。
もちろん、ポートフォリオの分散などは基本のリスク管理ですが、それでも利益が出ているうちに一部を現金化し、自分の人生のために活用することが、NISAを本当に価値あるものにするための大きなポイントではないでしょうか。