数年前のことですが、ある日の取引で、私は順調に利益を伸ばしていた日経225のポジションを、大引けの少し前に決済しようとしました。その時点で、100円以上は取れる状況でしたので、意気揚々と決済ボタンを押したその瞬間、価格が150円ほど急激に下落し、私の決済はその暴落の最安値付近で執行される結果となりました。
予測もしていなかった急変動にパニックで動揺しながらも「いったい何が起きたのか?」という疑問が頭をよぎりました。
長くトレードをしていれば、このような経験をされたこともあるかと思います。しかし、これを単なる「事故」と終わらせてしまうわけにはいきません。
冷静になってから改めて、この経験を振り返ると、大引け前の市場特性や、機関投資家の動きが影響していることが分かります。本記事では、このような大引け前や重要な経済指標のリスクを解説するとともに、重要な経済指標発表時にも同様の現象が起こる理由と、それを回避するための具体的な方法をご紹介します。
大引け前の市場の特性
- 流動性の低下:大引けの少し前は取引が落ち着き、流動性が低下する場合があります。そのような状態の場合は、少量の注文でも価格が動きやすくなり、急激な変動が発生するリスクが高まります。
- 機関投資家のポジション調整:機関投資家は、大引け前に日中のポジションを手仕舞う傾向があります。特に利益確定の売り注文が集中すると、価格が大きく動くことがあります。このような行動は、個人投資家には予測しづらい一方で、市場全体の動きに大きな影響を与えます。
- 高頻度取引(HFT)の影響:高頻度取引を行うアルゴリズムは、流動性が低い時間帯を狙い、大量の注文を一瞬で処理することで市場を動かします。個人投資家がこの動きに巻き込まれると、意図した価格で取引ができなくなることがあります。
- スリッページの発生:私のケースのように、大引け前の急変動ではスリッページが発生することがあります。スリッページとは、注文を出した価格と実際に執行された価格が異なる現象です。急激な価格変動が起きると、特にストップロス注文や成行注文で大きなスリッページが発生しやすくなります。
重要な経済指標発表時の共通リスク
大引け前の市場特性に加え、重要な経済指標発表時にも似たようなリスクが存在します。たとえば、米国雇用統計、中央銀行の政策金利発表、GDPやCPI(消費者物価指数)など、市場参加者が注目するイベントでは、以下のような現象が起こります。
- 市場参加者の心理的緊張:経済指標の結果次第で市場が大きく動く可能性があるため、多くの投資家が様子見姿勢を取ります。その結果、発表前は流動性が減少し、価格が動きやすい状況になります。
- 急激な価格変動:指標発表直後、大量の注文が市場に殺到します。これにより、価格が短期間で大きく動き、個人投資家が想定していない損失を被ることがあります。
- フェイクアウト(騙し):指標結果を受けた一時的な価格の動きが、実際のトレンドと逆方向に進む場合があります。例えば、発表直後に下落した後で急上昇する、といった動きが典型例です。
- スプレッドの拡大:発表直後の急変動により、取引コストであるスプレッドが一時的に大幅に広がることがあります。これにより、思った以上に高コストな取引となる場合があります。
リスクを回避するために
これらのリスクを完全に避けることは難しいですが、以下の方法でリスクを軽減することが可能です。
- 発表前後の取引を避ける:大引け前や重要な経済指標発表前後の取引を避けるのが、最も効果的なリスク回避策です。特に指標発表の10分前から30分後までは、急変動が起きやすい時間帯とされています。
- ストップの活用:ストップ注文を使うことで、利益を確保しながらリスクを限定できます。ただし、急変動時にはスリッページの影響を受ける可能性があります。
- 情報や出来高を活用:板情報(オーダーブック)や出来高を監視することで、どの価格帯で注文が集中しているかを把握できます。これにより、重要な価格帯での反発やブレイクアウトを予測しやすくなります。
- 経済指標カレンダーをチェック:取引を行う前に、経済指標の発表スケジュールを確認しておきましょう。また、経済指標をチャートに表示するツールもありますので、活用するようにしましょう。予めリスクの高い時間帯を避けることで、不測の損失を回避できます。
失敗を学びに変える
今回の私の経験は、大引け前の急変動による大きなスリッページでしたが、同様のリスクは経済指標発表時にも起こり得ます。
私の場合は、決済ボタンを押す前ではあれば、暴落後は戻しますので、少なくとも損失になることは無かったのですが、決済ボタンを押した瞬間ですので止めることもできませんでした。もう「事故」ですので、避けられない場合もありますので、一つの経験であると割り切るしかない部分はあります。
また、これらの状況に直面した際、冷静さを失わないために、感情をコントロールすることも重要です。多くの成功した投資家は、失敗から学び、それを次の行動に活かすことで成長しています。
しかしながら、もっとチャートを深く理解することができたのであれば、その暴落を予測することが出来たのかもしれません。プロップトレーダーの相澤先生は、チャートの裏側を含めて3次元でチャートを見るとおっしゃっています。
チャートの裏にあるものとは、単なる価格や形状の動きではなく、その背後に潜むトレーダーたちの心理や行動、そして市場の潮目や参加者の動きです。これらを理解することで、チャートがただの線の集合ではなく、市場全体の動きを読み解くツールであることに気付けるでしょう。「相澤良介の1000万デイトレード術」
トレーダーとして重要なのは、失敗を学びに変え、次回の取引に活かすことです。市場には予測不可能な動きが存在しますが、それを理解し、冷静に対処することで、より安定した取引が可能になります。
また、個人投資家がより強い立場に立つためには、市場の変動性を利用して有利なエントリーポイントを見極めるスキルを磨くことが不可欠です。
まとめ
大引け前や経済指標発表時は、機関投資家の行動、スリッページといったリスクが高まる重要な時間帯です。これらのリスクを理解し、適切に対策を講じることで、個人投資家でも冷静かつ効率的に取引を行うことができます。
特に、経験を通じて学びを得ることで、リスク管理や市場分析のスキルを向上させることが可能です。トレードにおいて重要なのは、常に新しい教訓を得て、それを実践に活かす姿勢です。
次回の取引では、ぜひこれらのポイントを意識してみてください。リスクを最小限に抑え、安定した利益を目指しましょう!
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